2020年12月3日、BITECで開催された「Additive Manufacturing Conference 2020」に登壇したYN2-TECHの中村MDとキャステム・タイの三野 琢磨(みの たくま)管理部長。お二人に両社の協業について詳しく伺った。
1948年に製菓業(マルト製菓)として創業したキャステムは、創業50年以上の歴史を持つが、そのマインドは若々しい。
菓子作りの機械のメンテナンスを自社で行なうために始めたロストワックス製法による部品作りの分野では、技術を磨くことで同製法の第一人者(社)となった。
また、2015年からは3Dプリンターの使用等によるダイレクトキャスト製法に力を入れている。
そして、タイにおいては、YN2-TECHと共に取り組むAdditive Manufacturing(略してAM/付加製造、積層造形法という意味)の分野で、リーダー的な存在感を示している。
YN2-TECHの中村MDは「キャステム・タイには、金属パーツや、熱解析をしっかり行なって製作したい製品の試作品作りをお願いしています。また、逆に設備の相談を受けることもあります」と両社の関係を説明する。
また、「キャステムは3Dプリンターを活用して金属を扱える点や、いろいろな企業とコラボして金属製品を作っている。それをきちんと収益化している。そして、マーケティングをして広報活動も行なう。そんな同社の考え方はとても勉強になります。(中村MD)」と同社の存在が良い刺激になっていると語った。
一方、キャステムの三野氏は「YN2-TECHは、自動車関連の製造企業と強力なタッグを組んでパーツ設計をしている。YN2-TECHと協業することで、ロストワックスによる金型製法を知らない方々に、設計段階から当社の得意とする製法を知っていただくことができる。今後も我々の技術で同社をサポートしていきたい」と語る。
多品種小ロットに対応できる、ロストワックス、メタルインジェクション、ダイレクトキャストの3製法
ロストワックス製法:紀元前からある鋳造技法のひとつだが、キャステム独自の研究開発により、切削加工でしかできなかった高精度のネジ、ギヤといった部品の製造が可能になった。
ロストワックス製法の強み
① 安価に金型製作が可能かつ半永久的
② 複雑な形状のものを量産生産することが可能
③ ステンレスなど、硬くて切削が難しい金属素材にも対応
④ チタンをはじめとする高レベル鋼材への対応も可能
メタルインジェクション製法(金属粉末射出成形法/MIM):粉末状の金属粉とバインダー(接着剤)を混ぜ合わせ、それを金型に射出して作る加工方法。
メタルインジェクション製法の強み
① 小物複雑形状の部品を高い精度と強度で量産することが可能
② 形状の自由度が高く、シャープエッジ、異形穴、交叉穴など三次元形状が作製可能
③ 複数部品を一体化して製造することでコストダウンが可能
④ 寸法精度が高い(メタルインジェクションの一般公差±0.5%)
⑤ 相対密度96%以上を実現
⑥ 溶製材に近い機械強度が得られる
⑦ 溶製材と同等の熱処理、メッキ等の表面処理が可能
ダイレクトキャスト:ロストワックスのWAXを3Dプリンターで造形されたプラスチックに置き換えて金属化する製造方法。
ダイレクトキャスト製法の強み
① 金属用3Dプリンターより安価に製作可能
② 金型レスで製作可能
③ 多種多様な鋼材で製作可能
中村MDは「今後の展開としては、両社で『金属を使ったAMソリューション』のワークショップを開催することを計画中」と、構想の一端を話してくれた。
「今回のカンファレンスで紹介されたAdditive Manufacturingという、金型を使わない製法で、新しいことをやっていきたい。(中村MD)」
YN2-TECHの中村MDは、2021年のサムライアジア・マガジン3月号と4月号に登場を予定している。続報に期待したい。